(仮称)ふくしま農業人材育成センター施設設計プロポで、辺見設計・C+A共同企業体が最優秀者に選定。技術提案書も公開(クリック)
これは個人で参加できないコンペのプロポーザルとその結果。5者の提案書とその講評が全てpdfで公開されていたので読ませていただいた。ちょっと考えさせられるものがある。
まず上から提案書を1つづつ見ていった。
最優秀となった辺見設計・C+Aさんの提案タイトルは「先人の開拓スピリットを未来へつなぎ、新時代のリーダーを生み出すクリエイティブ・プラットフォーム」、再生建築研究所・八光建設さんのタイトルは「農業の今と未来をつなぐ校舎--おおらかな風景とあたらしい文化をつなぐ小さな小屋--」このあたり、志がとても高いのがわかる。それ以外はもう少し現実的なタイトルになっているけれども、内容を読ませていただくと同じようにやはり志はとても高い。どれも素晴らしい提案になっている。
提案課題は5つ。
- 県農業の持続的発展に向けた先端技術(スマート農業)を学べる施設
- 良好な教育・研修環境の中で学生や研修生が快適に過ごせる施設
- 学生等の自らの学びと農業者、指導者等と多様な交流を促す施設
- 伝統と革新、地域に配慮した意匠、県産材の積極的な活用とエネルギー性能が高く持続可能性に優れた施設
- それ以外に提案者が特に重要と考える提案
詳細資料はこちらから。
なぜこの公募が行われたかと言うと、老朽化した施設の更新とアップデートされた研修に必要な施設を作りたいから。なぜそれをするかと言うと、教育研修体制と内容を強化する事と学校の運営機能を強化したいから。さらにその上位の目的は地域の農業経営者でありリーダー人材の不足を補いたいから。具体的にはIT技術を応用したスマート農業に明るい人材を輩出する事。こちらももっともな内容となっている。公募を募るにあたってもちろん基本要件はきちっと決められている。
考えさせられるものがあると言ったのは次の点。
提案するに当たって、公募資料の中に無いものが多く混じっている。それは例えば、スピリット、自由で多様、交流を促す、何かと何かを有機的につなぐ、学生が能動的または自主的にと言うような事。これはそれぞれの提案者のノウハウであるとも考えられるけれど、単に修飾にも見える。実際にそこに働く教師や学生にリサーチしてと言うのもあまり考えられないし、要件の中では何をやるは書かれて行ってもどのようにとは書かれていない。そうしたところからおとぎ話、SF、空想を重ねて実施提案に被せて行くのだろうと思われる。
実施しないコンペや学生作品であればこうした空想は常にあり、逆に言うとそれが無ければいけないのだけれども、実施となると言葉にして表しにくいポイントを提案者が大幅に補う作業が必要なのだろう。
そしてモヤモヤしてしまうのは、実際の教師や学生はどのように彼らの中で交流と言うのをしたがるものなのだろうか?教師は交流より一方的に知識を頒布するものとして教育を考えていたりはしないだろうか?学生は想定よりも積極性に欠けていて教えられた事を飲み込む作業のみに焦点を当てていると言う事はないだろうか?そうしたネガティブな側面を建築は別のより良い方向へ向ける手助けはできるのだろうか?そもそもそうした提案自体が必要なのだろうか?と言った事だ。こうした事は提示されている書類からはなかなか読み取れない。
ただ、それとは別にもう1つ思うのは、もし提案者にそうした、つまりおとぎ話を紡ぎ出すマインドが全く無いとしたら、きっとそれでも建築と言うものは出来るのだろうけれど、出来た途端にその建築は劣化を始めてしまい、ただの中古建築になって行くのではないかと想像できる事。作られた時点が最も価値があり、5年、10年と経過するうちにどんどんと価値を落としてしまうただの建物になってしまうのではないかな?、とそんな風にも考える。これは全くわからない事だけれど、
いずれにせよ、参考になりました。ありがとうございます。
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