2021/07/25

「スターハウスの未来にある暮らし」提出パネル

 

パネルはメジャーアップデートで11バージョン程度。細かいアップデートもその間に無数にあった。この図はほぼ最終に近づいていた頃のパネル。黄色い四角形の中がメインコンセプト。その右がサブ的なもの。右下は図面(1/100)。左下はパース。

パースでは通常壁面のテクスチャも描く必要があると考えるが、ここで目を引くテクスチャを用いてイメージを固定してしまうと人が実際に入った時の個別化に影響を与えてしまう事を考えて何も設定しなかった。インテリアを求められているのに非常識とも考えるが、それよりもコンセプトの方を重視したかったのであえてそうした。

最終パネルなのでここへ来てこれ以上細かい説明をするのは野暮になる。

おわり

(この記事は後日投稿です。実投稿日は提出締め切り日の後です。2021年9月11日)


2021/07/24

「スターハウスの未来にある暮らし」見せる方法

  そうして次はどうやって生活を「見せる」かを考えた。初期の案はこれ。


最も奥の壁まで、そしてそこにある窓の光が導入できるように考えた。実際の寸法を考えないうちはこれはとても良い案に思えたが、寸法を置くようになるとこれはかなり難易度が高いとわかる。こうした実際のスケール感は経験で獲得するかCADで線を引きながらでないと難しい。

これも寸法を度外視して楽しいだけの案。できるだけ見せるために部屋のパーティションを山並みのようにしていろいろな場所や人が「見え隠れ」する楽しさを狙った。面白いのだけれど、団地のユニットで再現するには広さが足りないようだ。
次は実際の図面の上に適当ながらも機能を置いていったもの。ベッドとバスを隠したい部分のコアとして考えている。
ここからが寸法とともに検討を始めたもの。より現実的にするために床をフローリングのようにしているが、これは最終提案で使うつもりではなく、何となく感じをつかむためにやっている。

初期はコアを部屋の中央にパーティション無しで置き、リゾートホテル風にしていた。しかしながら古い団地のユニットは天井高が低く、床下にも余裕が無い可能性があり、バスの排水をフロアの下に転がす事ができない可能性があるので断念し全てをサイドに寄せ、外壁に穴を開けて外配管とした。外配管であると外観上の見た目が悪くなる可能性があるが、メンテナンス性は上がる。

メンテナンス性は重要だ。このコンペのテーマに「未来」と言う言葉が入っているが、さて、未来とはいつの事? もしこの案が通ってスターハウスがこれ通りに改造されるとして、使われて10年か20年。また古いと言う事になった場合にどうするか? また同じように「スターハウスの未来」コンペが行われるだろう。そう、未来は固定された一時期の事ではない。長いのだ。だからメンテナンスが容易で次の未来とその次の未来のために今その責任を果たすのは良い事じゃないだろうか?

つづく

(この記事はリアルタイムでなく後日投稿しています。)



2021/07/23

「スターハウスの未来にある暮らし」コンセプト

 

さて、提案のコンセプトだけれども、絵の中の右上の部分がその肝になるポイントとなった。「コモンを有効に使うためのインテリア」だ。


インテリアを提案してコモン(共有部分)とどう関係がある、または出るのかと思われるだろうけれども、これは前の記事で書いた住居ユニットの「完璧性」を壊してしまう事を意味する。個別居住スペースを半分程度コモンと同じものにしてしまう事。そうして自分が使うべき場所に他人が居る事があり、それを許容する。それは「良い」事なのかそうでない事なのかはわからない。その時々の事情による。絶対に素晴らしいとは言えない。

けれども、一つ信じられる事として、人々はそこに何のルールが予め設定されていなくても自らの思考の中で自分たちにとって快適なルールを作る事ができると言う事だ。日本では多くの人が窓口で何かを買う場合に床に線が引かれているのを見てそこに並べば良いと考える。別の国にはその線は無いが同じようなシチュエーションは発生する。小さな1つの窓口に人が群がって統制が取れておらずマナーも規律も無いと我々は感じる。が、そうした人たちでも買いたい物を買う事ができる。そこに何もルールは無いと言えるだろうか? 可視化できないルールやマナーや規律がそこに発生していたが、我々が気付けないだけだったと言う事はないだろうか?


そこで考えるアイデアはこうだ。

これまでの住宅のユニットはコモン側が出入口となっていて、そこはドアが閉じればそれで終わり。中に入れば住人は窓側を明として暮らし、コモン側は暗となる。つまりコモンとはドアを閉じた時点で関係は切れる。一時的な「引きこもり」になる。明日の朝までさようなら。起こさないでね。

これを明暗逆にする。コモン側を向いて生活するようにコモン側を常に開いた状態に近付けてしまう。(もちろん隠れるところはある。寝る場所や風呂だ。) 常にいる場所は喫茶店の席のように常に誰かから見られる可能性がある。それは快適か? わからない。

でも、利点もあるかもしれない。

今はSNS等で自らのプライベートをある程度公開して、それをもって自分のアイコンにする時代だ。Youtubeで自分の家や行動や家族や猫を公開してそこに他人と自分が価値を見出す。これまでは名の知れた会社に勤めている事や良い学校や高級な持ち物がそれをしていたが、今は違う。ゴミ屋敷になっている親の家でもそれができる。

面白い時代だ。

だから住み方もそれを同じで個人を象徴するアイコンになる可能性がある。やってみる価値は多いにあるはず。今赤羽台に残っているスターハウスは45戸のみ。であれば広く日本の全員にアピールする提案でなくとも良い。最大45戸に入る45家族が最大値となるのだから。


(この記事はリアルタイムでなく後日投稿しています。)

2021/07/22

「スターハウスの未来にある暮らし」調査

 スターハウスをやるにあたって、設計者の「市浦健」と言う人について調べた。この建築家(建築家と言われない場合もある)に関する資料はネット上にもあり、氏の作った建築事務所は今でもちゃんと存在しているからそこに本人の言葉も残されていて助かった。ここではその詳細は書かない。

氏の功績としては、団地と言うシステムの初期コンセプト作りに関わり、「食寝分離」を唱えそれを具現化した事。そしてスターハウスの形状を成立させた事だ。ただ、この2つには個々に考えられていて関連していると言う事もでもないと考えられる。「食寝分離」は日本の新しい居住空間のスタンダードを提案していて、それは人の生活様式をも変化させる提案になっていた。過去からの生活様式を参照し、そこからずっーと線を引いてきてこれからはこうなるはずだと言ってはいるが、実質的には建物に生活を合わせなさいのような事になっていなかったとは言えない。(戦中の靴に足を合わせろ!的)

この画像は市浦氏のものでは無かったかもしれないが、この時代にこうしてコンセプトが作られたと言う参考資料。


スター型の外観に関しては、機能面でのものではなく、普通の板状集合住宅に対しての反骨と言うようなものであり、単に景観上のアクセントとして考えたアイデアらしい。ただ、このスター型が廃れた原因は、効率を求めて内部を標準化したり乾式工法を提案した氏の考えのしっぺ返しのようなもので、板状集合住宅よりもコストが高かったと言うのが理由だそうだ。安いコストである程度良質な物を多く作ると言う、その後もずっと日本がやってきたその考え方がここでも適用されたのだった。


しかしながら、本当にそれだけなのか? と言うのはコストは内部事情なわけだが、住む方の事情としてはどうなのか?と言う点は資料が無いが少し気になるところ。例えば、スター型に人気が集まってスター型を指定して住みたいと申し出る人が山ほどいたとしたらどうだっただろう?経済が登り調子の時に、給与レベルはそれほどでなくともそこに住むことがステイタスと考えられたりすればスター型は作られ続けたのではないか?これは今となってはわからない事であるけれども。

なぜそんな事を言うかと言うと、団地を選ぶ人たちにとって建物が板状でもスター型でも実はどちらでも構わない、住んでみればどっちも似たようなものだった可能性もあるな、と考えたからだ。簡単に言うと、外観がどうでも中身の間取はそう変わるものでもなく、敷地内を歩いて識別できる建物程度だったのではないだろうか?

これは悪い言い方過ぎたかもしれないが、逆に言えば間取が住む上である意味「完璧」であって、その中で一通りの生活が全て済んでしまう。だから外観形状に依存する必要が無いと言う意味だ。


そして、その完璧性自体が当時としての団地の新しさ、先進性であり、特異性だったと考えられる。その完璧性故に、団地の特徴である共有部分は実は徐々に単に通路と化してしまったのではないだろうか? 生活するのにそれほど重要でないコモンと外観形状と言う意味。

その点がこのコンペの提出案で特色を出したいところになったのだった。

つづく


 (この記事はリアルタイムでなく後日投稿しています。)

2021/07/21

「スターハウスの未来にある暮らし」応募

 


URまちの暮らしコンペティション「スターハウスの未来にある暮らし」(クリック)に応募した。

応募案の作成についてここでは全ての経緯を書く事はしない。理由はあまりにも多岐に渡る検討と資料があり、全ての資料とアイデアを使用してはいないために書いてしまうと提出案との関係がわからなくなるだろう。

このコンペの応募に関してはいくつかの記事に分割して簡単に記録しておく。


応募の動機

このコンペの面白いところは「団地」であり、しかも「インテリア」と言うところだ。インテリアが無くて団地だけであれば応募しようと考えたかどうかはわからない。と言うのは、これまでも団地に関しては団地の共有部分に関していろいろ行われてきたしコンペもあったようだった。隈研吾氏も団地の建物の外側に付属するものを建てている。

が、個人的にはその共有部分のみと言う点が実に面白くない。ほとんどの場合、個人個人の生活とは無関係に建てたり作ったりしていて、その物自体は確かに魅力的ではあるかもしれないが、要は広い場所に魅力的な餌を置いておいて穴から出てこいと言うような物になっている。そうしたやり方もありだとは思うが、それだけか?とも考えなくもない。

これとは別に乾氏が別のどこかで提案した団地のリノベーション案と言うのもあって、そちらは現代的に職住が一体になった提案だ。住居の使われ方としては確かにそれはある。

さて、このスターハウスのコンペだけれども、上記2つの折衷と言うか、どちらも一緒に満足する事が求められていそうな事が要件として書かれていた。住み方と周辺環境との関係を考えて→インテリアの提案。と言うわけで、これは探してもなかなか出てこないタイプのコンペと言えないだろうか?少なくとも、一般的な民間のマンションでは絶対に無いものだ。

面白い。これはやるしかないよね!、と言うわけ。


だから当然、提出案は団地のコモンを活かすインテリアと言う事になる。

つづく


 (この記事はリアルタイムでなく後日投稿しています。公開日はコンペの提出日。)