スターハウスをやるにあたって、設計者の「市浦健」と言う人について調べた。この建築家(建築家と言われない場合もある)に関する資料はネット上にもあり、氏の作った建築事務所は今でもちゃんと存在しているからそこに本人の言葉も残されていて助かった。ここではその詳細は書かない。
氏の功績としては、団地と言うシステムの初期コンセプト作りに関わり、「食寝分離」を唱えそれを具現化した事。そしてスターハウスの形状を成立させた事だ。ただ、この2つには個々に考えられていて関連していると言う事もでもないと考えられる。「食寝分離」は日本の新しい居住空間のスタンダードを提案していて、それは人の生活様式をも変化させる提案になっていた。過去からの生活様式を参照し、そこからずっーと線を引いてきてこれからはこうなるはずだと言ってはいるが、実質的には建物に生活を合わせなさいのような事になっていなかったとは言えない。(戦中の靴に足を合わせろ!的)
この画像は市浦氏のものでは無かったかもしれないが、この時代にこうしてコンセプトが作られたと言う参考資料。
スター型の外観に関しては、機能面でのものではなく、普通の板状集合住宅に対しての反骨と言うようなものであり、単に景観上のアクセントとして考えたアイデアらしい。ただ、このスター型が廃れた原因は、効率を求めて内部を標準化したり乾式工法を提案した氏の考えのしっぺ返しのようなもので、板状集合住宅よりもコストが高かったと言うのが理由だそうだ。安いコストである程度良質な物を多く作ると言う、その後もずっと日本がやってきたその考え方がここでも適用されたのだった。
しかしながら、本当にそれだけなのか? と言うのはコストは内部事情なわけだが、住む方の事情としてはどうなのか?と言う点は資料が無いが少し気になるところ。例えば、スター型に人気が集まってスター型を指定して住みたいと申し出る人が山ほどいたとしたらどうだっただろう?経済が登り調子の時に、給与レベルはそれほどでなくともそこに住むことがステイタスと考えられたりすればスター型は作られ続けたのではないか?これは今となってはわからない事であるけれども。
なぜそんな事を言うかと言うと、団地を選ぶ人たちにとって建物が板状でもスター型でも実はどちらでも構わない、住んでみればどっちも似たようなものだった可能性もあるな、と考えたからだ。簡単に言うと、外観がどうでも中身の間取はそう変わるものでもなく、敷地内を歩いて識別できる建物程度だったのではないだろうか?
これは悪い言い方過ぎたかもしれないが、逆に言えば間取が住む上である意味「完璧」であって、その中で一通りの生活が全て済んでしまう。だから外観形状に依存する必要が無いと言う意味だ。
そして、その完璧性自体が当時としての団地の新しさ、先進性であり、特異性だったと考えられる。その完璧性故に、団地の特徴である共有部分は実は徐々に単に通路と化してしまったのではないだろうか? 生活するのにそれほど重要でないコモンと外観形状と言う意味。
その点がこのコンペの提出案で特色を出したいところになったのだった。
つづく
(この記事はリアルタイムでなく後日投稿しています。)